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Tetra Drip 開発ストーリー

  • nmtsn5
  • 1月6日
  • 読了時間: 4分

更新日:6 日前

by Shingo Numata


 いわゆるサードウェーブの到来で、2000年代後半には年々品質の高いコーヒーが手に入りやすくなっていた。僕もスペシャリティコーヒーに魅了された一人だった。

 2009年に僕と妻はネパールをハイキングする旅の計画を立てた。出発前、山を眺めながらコーヒー飲みたいねとあれこれ道具を調べた。当時もアウトドア用のコンパクトに収納できるコーヒードリッパーは存在していたが、なにせ僕らは当時、仕事の関係で中国に住んでいたので、気の利いたアウトドア用品を手に入れるのは簡単ではなかった。そこで、1.5Lのペットボトルを切ったり火で炙ったりして円錐型のペーパーフィルターに合うような形に整えてドリッパーを自作した。当時はそんな言葉知らなかったが初めてのMYOGだった。


初めての自作コーヒードリッパー
初めての自作コーヒードリッパー

 ネパールの山歩きは最高だった。ヒマラヤの荘厳な山並みを眺めながら自作のドリッパーで淹れたコーヒーは格別だった。思い返せばこれが原体験だった。


アンナプルナベースキャンプ, ネパール (2009)
アンナプルナベースキャンプ, ネパール (2009)

 翌年、日本に戻った僕は本格的にコーヒードリッパーについてリサーチし始めた。手に入れることができる殆どのコーヒードリッパーを購入して使ってみた。

 カフェや家庭で使われるソリッドなドリッパーは美味しく淹れられるが、持ち歩くには重いし嵩張る。対してアウトドア用のものは、軽量・コンパクトを最優先とした構造であるために安定感や剛性に欠け使い難かったし、とにかくコーヒーを抽出できればいいだろうというものばかりだった。


当時のアウトドア用コーヒードリッパー
当時のアウトドア用コーヒードリッパー

 つまり、その時点で自分が納得できる携帯用コーヒードリッパーは世界中のどこにも存在していなかったのだ。小さな事だが自分が解決すべき問題が見つかった感じがしたのを覚えている。


 ワクワクした。


 そこからはコーヒードリッパーの開発に没頭した。あれこれと構造を考えている時、VARGOのヘキサゴンストーブやSnow Peakの焚火台型ドリッパーの構造を見て、平らなプレートを組み合わせた多角錘構造なら当時既に主流となっていた円錐型ペーパーフィルターに対応できるし、分解すればカード状にコンパクトに収納できるのではないかと考えた。しかし、面が4つ以上あると、各面同士の角度に自由度が生まれてしまう。その自由度をなくそうとすると別の機構(例えば、ストッパーなど)を加える必要があるため、構造は複雑になり携帯性を損なうことになる。この問題の解決策をしばらく模索し、最終的に面の数を3つにすることに思い至った。3つの面で構成される三角錐形状であればそれぞれの面同士がお互いを拘束するので角度は固定される。つまりシンプルでフラットなプレートでありながら組み立てると高い安定感と剛性を備えたドリッパーにできるのだ。


構造による剛性の違い
□構造と△構造の剛性の違い

 初めは厚紙をカットして形を作り、そこから金属をレーザーでカットをしてくれる工場をインターネットで探しサンプルを作ってもらい実際に使ってみた。幾度かの試作を経て基本的なデザインが固まったのはネパールの旅から戻って5年後の2014年だった。

Tetra Drip 試作品
Tetra Drip 試作品

 2015年、クラウドファンディングで「Tetra Drip」と名付けたこのドリッパーの立ち上げ支援を募った。このプロジェクトは本当に多くの方々にご支援をいただいた。いただいた資金ももちろん大きな力になったが、寄せられたプロダクトに対するポジティブな反応は前職を退職したばかりの僕を勇気づけてくれた。心から感謝しています。本当にありがとうございました。


製品版Tetra Drip
製品版Tetra Drip

 そうしてTetra Dripは2016年に正式にローンチされた。その後は小さな変更はあったものの、これ以上引くものがないミニマルデザインであるが故、基本設計は今も変わっていない。

 海へ、山へ、世界中の様々な場所へと皆さんに連れて行ってもらい、素晴らしい景色を眺めながら美味しいコーヒーを飲むために使ってもらっている。開発者として、これ以上幸せなことはない。


 
 
 

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